卒業生登場

今日のシオン

授業中、若い女性がやってきた。

うーん、どこかで見たことあるなあ、と思っていたところ?

「センセー、わかる?」

ここでわからん、と言えないところが、この仕事の辛いところ。

せっかく来たのに

「お前、誰や?」

とは言えない。

「おお、もちろんやがな」

と答えたものの、頭の中でめちゃくちゃ回転させて、なんとか思い出す。

「Kさんやな?」

恐る恐る答えたところ正解。

フー、危ないやんか、と思っていたら

「じゃあ、この子は?」

ともうひとり顔を出すではないか。

再び頭を高速回転、だ、だめだ。

雰囲気はわかるし、中学校の時の顔も浮かんでくるんだが名前が出てこない。

「すまん、どうしても名前が浮かばんがー」

「Tです」

「そや、Tさんやー。体操服着ていないけんわからんかったがー」

二人は塾では一緒だったが、学校が違うため、言葉をかわしたこともなく、

高校もそれぞれ別々の高校に進学し、

この春、専門学校で再開し、仲良くなったらしい。

ふたりとも中学のときはどちらかと言えば地味系だったのに、将来はブライダル関係の仕事につくということで、ずいぶんとおしゃれになっていた。

みんなすっかり変わるもんである。

Tさん、失礼しました。

体操服で来てくれたらわかったのに。

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